2019年8月19日月曜日

山尾悠子 中川多理『小鳥たち』

奇跡めいている。その煌めき、比類のなさ。掌篇と人形。その奇跡めいた出会いによって。物語は迷宮と化す。珠玉の両者が。惹かれ合い、互いの美に、応え合う事で。物語は際限を失い、より繊細に、より精巧に、どこまでも眩く、高まり行き、深まり行き、至る。その奇跡めいた呼応によって。完成し得た物語の。新たに生まれ、終わりをも得た、物語の。美しさ、煌めき。あまりにも気高く、尊い。
断片、瞬き。ほんの一部分、ほんの一幕に過ぎない場面、時間、風景、人々。けれど多くを含む。多くを備えているとわかる。物語。軽やかで、自在で、細く、可憐で、愛らしい。小鳥たち。けれど無論、決してそれだけではないとわかる。妖しさを含み、危うさを含み、脆さを含み、艶を含み、若さを含み、軽さを含み、老いを含み、威厳を含み、重さを含み、喜びを含み、嘆きを含み、醜さをも含み、今を含み、過去を含み、未来を含み、始まりを含み、終わりをも、滅びをも含み。驚くほどに多くを備えているとわかる。どこまでも続き、広がっているとわかる。悠久に在るとわかる。その絢爛である事。豊かで、深遠で、膨大である事。際限のない事。その奇跡めいている事。気高く、尊く、比類のない、美しさ。



小鳥たち
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