2019年7月13日土曜日

松浦理英子『優しい去勢のために』再読の記録

大変に癒される。松浦理英子の姿勢、言葉、その生真面目さ、真摯さ、松浦理英子の求むるもの、目指す所、領域、その達し方、方法、そのすべてに癒される。性器結合的性愛観及び男根中心主義的なものではない、物の見方、見え方、感じ方。とても心地よい。松浦理英子の鋭さ、鋭敏さ、敏感さによって、自分は落ち着きを取り戻す事が出来る。松浦理英子が見せてくれる愉悦の、その自在さによって、自分は救われる。
性器結合中心的性愛観を突き崩そうとする、その情熱の好ましさよ。松浦理英子が求むるもののその、目指す先のその、豊かである事。好ましさしかない。〈性器〉さえ、脱ぐ。剥き身になったその、何と鋭敏である事だろう。一気に広がる、一気に開ける。性器を中心とするものではない快楽…それは豊かで鮮やかで自在で、もっと近しくて、底が知れないもの。今までの至上が、酷く悲しくて狭くて、矮小なものに見えるほどに。豊かであるもの。
性器を中心とする、性器結合を至上とする快楽からの脱却。更なる愉悦を求め、松浦理英子は超えて行く。拘りを、当然を捨て、かつての至上を捨て、更なる領域へと。自らに対し、自らの欲望に対し、貪欲であり続けるが故に。決して妥協せず、うやむやにせず、自らが求むるものの形を、正体を、領域の在り処を、明らかにしようと挑み続けるが故に。殉教的なまでに、真摯に、求め続けるが故に。当然の如く、超えて行く。その生真面目さよ。好ましくて仕方がない。

本当に、性器結合的性愛観及び男根中心主義的なものではない視点で物事を見る快さよ…。なんとも痛快で、どこまでも気持ちのよい読書体験。



優しい去勢のために (ちくま文庫)
松浦 理英子
筑摩書房
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