その存在の大きさ、自らが、すっぽりと収まってしまうような。そこにいれば、何も不足する事がない、と言うような。自らの求める何もかもがそこにある、と言うような。絶対的な安心感。それは本当に稀有で、恵まれていて、貴重なものだ。汚さがないと言う事。何一つ他に必要としない、何一つ貪欲になる必要がないと言う事。
どこまでも澄んだ喜びと幸福。奇跡めいている。淫すると言う言葉はその蜜月を語るに際してこの上なく相応しく、けれど、淫すると言う言葉を以って語られてなお、その蜜月が、どこまでも清澄なものであると言う稀有さ。だからこそ、生じた。生じ得た。あの明るさ。綺麗で、軽やかな、あの。
「湧きいづるモノたち」と言う、悲しい綺麗さ。自らが見つけた拠り所。自らが願った通りの、大きな大きな拠り所。享受しながら、けれど迷っている。確かに安らぎ、救われながら、それでも、問いかけ続けている。その存在の大きさに、すっぽりと隠れてしまいながら、ずっと、考え続けている。心細く、不安な事を。こわれてしまった者の事を。考え続けたまま、自らが消えてしまわぬよう、せめてしがみついている。重たい綺麗さ。
自分が所有する本の中で、最も綺麗な本。