2019年6月14日金曜日

佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』

最高に熱かった…!激熱…!!語り手の間違いのなさよ。エディ最高か。素晴らしかった。絶対に外さないし、見失わないし、折れない。ずっと当て続ける。付いて来てよかった。ずっと乗れた。乗り続けられた。間違いなかった。ちゃんとわかっていると言う無敵さ。何がよいか、何が最高であるかを。如何に今がおかしくて、どうかしていて、最悪で、あり得ないかを。ちゃんとわかっているから素晴らしい。馬鹿げた事を、極めてわかり易く馬鹿げていると思い知らせ、かつ、自分達の命運もまた、その馬鹿げた事どもに翻弄されざるを得ない事をも自覚している感じ。そしてそれでもなお、当然、乗り続ける感じ。本当に堪らない。
彼等は決して、やめたりしない。止まりはしない。自らの熱情のために。自らの熱情そのものであるもの達のために。それがなければ意味がない、と言うような、最高に乗れる、と言うような、自分達の最高のために。誰も彼等を止められない。誰も彼等からそれを奪う事は出来ない。あんな馬鹿げた事ばかりしかしない連中になぞ、奪われはしない。
あらゆる酷さを見る。あらゆる凄惨さを、胸糞悪さを見る。目の当たりにする。身をもって体験する。嫌と言うほどに。どうにかなってしまいそうなほどに。泣き叫ぶほどに。ぶっ倒れてしまうほどに。それでも彼等は戦い抜く。何とか踏みとどまりながら、当然。先を見るが故に。彼等は先を、戦争の先を、戦後を見るが故に。利用するだけ利用し。あとは捨ててしまえばいいのであるし。おさらばしてしまえばいいのであるし。吐いて、自嘲して、やり過ごして、瀬戸際を、けれどうまいことやってのける。彼等は最後まで、しっかりと、やってのける。最高か。
その情熱の本物具合と戦い方の素晴らしさよ。心底享受し耽る姿も、何とか踏みとどまり続ける姿も含め。絶対に負けない。ずっと負ける気がしなかった。初めからわかっていた気がする。エディが語り始めた時点で既に。

激熱いし、熱狂的であるし、若さ溢れているのだけれども、まったく綺麗事などではない。浮ついてもいない。拠り所と言う言葉では生ぬるい。誰にも奪えないような、それがなければ意味がないと言うような、とんでもなく厄介な、最高のための戦い。彼等を抑圧する事の無意味さよ。



スウィングしなけりゃ意味がない (角川文庫)
佐藤 亜紀
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