或いはアリス、不滅の少女について。アリスを不滅の存在たらしめるまなざし、その明澄さ、知性の高く、厳密である事において、極めて稀有なものである、そのまなざしについて。或いは森茉莉、及びモイラ、アナイス・ニン。自分とは異なる存在の、その現実、内面にあるものを見もせず、認めもせず、無理解、身勝手に解釈し続ける者たちの貼るレッテルや、浴びせる嘲笑を、やすやすと、いとも簡単に超えてしまい、無効化し、強く、堅牢に、けれどどこまでも魅惑的に輝き残り続ける、かの女性たちの作品たちについて。
〈あれほどの文学者でありながら、何故か徹底して自罰傾向の強いひと〉と言う山尾悠子の言葉を噛み締めつつ読む。常に内へ内へ、向かっている。内にのみ、向いている。内にてすべて、し終えようとしている。とても厳しいと思う。自らに対しては、特に。多くを課しているかのよう。多くを許せずにいるかのよう。その審美眼、嘆きの悲しい事。求めるもの、そう在ろうと願う存在の高さ、美しさ。言葉は親しい者たち、愛するものたちを語る時にのみ、わずかに緩み、ほころぶ。