2020年5月29日金曜日

金井美恵子『目白雑録5 小さいもの、大きいこと』

あああ、これだ。自分が求めている文章は。まさに、と思う。いつだって豊かで繊細で、鋭くて手強くて。ただ快いだけのものではない、刺激であり、至福…。身体がまず勝手に喜び出す。ピリピリ、チクチクと来て、嫌という程に、思い知らされる。思い知らされてしまう。話題的にも、今まさに自分が読みたい類のことであった。
様々なズレや愚鈍さや可笑しさを鮮やかに、この上なく的確で効果的なやり方を以ってわからされて、思わずゲラゲラ笑ってしまう楽しさ。そこここにある。違和感も、嫌悪も、気持ちの悪さも。割と常日頃感じている。そこかしこに蔓延り、のさばっている、幾つもの言説の中に。幾つもの前提やら認識やらの中に。金井美恵子の文章を読んで、やっぱりあれっておかしいんだよなあと、ようやく納得する。ようやく安心する。
もやもやもやもや、密かに溜め込んでいたあれこれ…そこここに感じていた白々しさや鬱陶しさや浅薄さや滑稽さやカマトト感やズレなど。金井美恵子の言葉によって、或いは金井美恵子が引用する言葉によって、浮き彫りにされて、より確かなものとなって。やっぱりそうであると、確信する事が出来て。やっぱりそれらは白々しくて浅薄で滑稽でカマトトぶっていて、ズレたものであるのだと、思い知る事が出来て。何というか、物凄く癒される。物凄く助かる。楽しく、ゲラゲラ笑いながら確信する事が出来て。すっきりする。そうすっきりする事が、本当に多い。 

本当に多いが故に。ここにいたいと思う。出来ればここで生きて行きたい。金井美恵子の文章の中で、生きて行きたい…。そりゃあ全部が全部、では当然ないのだけれど、圧倒的に心地よく、まさにそれ!が多いここで…。