2020年5月12日火曜日

高橋たか子『失われた絵』

執拗で、貪欲で、切実に、渇望している。超えて行く事をのみ、求めている。到達する事をのみ、目指している。極致とも言うべき、悦楽を。ただ退屈で、虚ろなだけの場所に過ぎない、現を脱し。極限へと至り。達する事をのみ、果てる事をのみ、切実に、求めている。
それは徐々に、明らかとなって行くもの。自らの内にある、未だ強く、残り続ける絵の、正体を読み解く過程において。どのような意味を持つのか。その不可解さ。その淫靡さの、背徳性の、正体を理解し行く事で。現の裂け目とでも言うべき、見過ごし難い官能的な出来事と、昏く蠱惑的なイメージの数々、呼応し、触発され、引き出さられるよう、発し、動き、自らを、自らと言う存在を、わかり行く事で。熱く、ひたむきに、貪欲に、内を、奥底を、探り続ける事で。明確となる願望。より強度を増し、凄みを帯び、至高のものとなる願望。

官能的である事。清廉である事。官能的でありながら、清廉であると言う事。その矛盾のなさ。極致としての、神と言う存在への言及。決して唐突なものではないように思える。自らの内へ、深みへ、潜り、奥底に滞る昏さを、光景を、見極め続ける試みの中で、自然と、当然のように、そこへ至ったのだと思える。