2020年10月31日土曜日

金井美恵子『ページをめくる指』再読の記録

魅惑の絵本たち。ページをめくる指の楽しさを伝え、伝え続け、伝え続ける事が出来るだけの強靭さを備えた、魅惑の…。何よりも読み手と親密である事の強さを思う。読み手との間に、親密で幸福な時間と空間を生み出す事が出来る絵本の強さ、限りない魅力…。親密であると言う事。読む喜びに、ページをめくる楽しさに満ちていると言う事。驚くほどに丁寧であり、丹念であり、緻密で繊細で、ささやかで細かくて、豊かな広がりと膨らみを持つと言う事。近しくて馴染みある、あらゆる感覚、柔らかさや温かさと言った快と、怖さや不安と言った恐れをも含むと言う事。自在な発想、けれどそれさえ、本物をよく知るものの、確かな経験と観察眼に基づいていると言う事。読む者にとって、限りなく魅惑的な存在であると言う事。微睡む事にも似た、微かに重く、密やかな幸福を伝える、限りなく親密で、魅惑的な存在であると言う事…。

或いはその魅惑の絵本たちと、金井美恵子の親密さについて…。金井美恵子が、紹介すると言うよりかは今一度読み直すかのように、今一度ページをめくる喜びを思い出し、感じ直すかのように、そのよさや楽しさについて語る絵本と、その絵本の読み手であり、今はそのよさや楽しさについての語り手である金井美恵子との親密さ…。心地よい。あまりにも近しくて、金井美恵子のものであり過ぎて、羨ましいとさえ感じる。
幸福な読書体験。金井美恵子と極めて親密な、豊かで繊細で柔らかで、美しくて可愛くて愛おしくて、不気味でシニカルで可笑しくて、甘やかで密やかで、読む事の喜びと楽しさに満ちた、幾つもの絵本たち…。(と、石井桃子…!)