2021年1月9日土曜日

笙野頼子『レストレス・ドリーム』再読の記録

私の戦い。追いやられ、押し込められ、傷つけられ、最初からないものであるとされ、殺されかかっていた、私の。初めて読んだ時とは比べものにならないくらい、悪夢的に思えるし、相手取っているものの根深さや強大さやタチの悪さをより絶望的な形で感じるし、アホみたいな言い方になるけれども、凄い。凄い事をしているのだと、改めて思い知り、戦慄する。
変換して組み替えて無効化する、意味を無くす、真逆にする、まったく別のものにする、そうして抜け出そうとする、壊そうとする、作りかえようとする、解き放とうとする、抗う、闘い続ける、すべて言葉を用いて。言語に言葉を以って対する。とんでもなく疲弊する闘い。敵はあまりにも根深くてしぶとい。
言葉によって暴く。どんどん暴いて行く。狂ったリズム、その地獄めいた世界を構築する言語の、歪みやインチキ、欺瞞、嘘臭さや胡散臭さ、デタラメで傲岸で、酷く偏っていて抑圧的で恫喝的で、気が遠くなるほどに膨大で、個々を支配し組み込み消費し利用するために用いられる類のものであると言う事。飾り、偽り、誤魔化しているだけで、所詮は同じである事、監視され、管理され、結局は抜け出せない、進めない仕組みになっている事。次々と暴き出して行く。
そこここに蠢く言語言説の、その内にある悪意、隠してはいるけれどもまったく隠し切れていない、漏れ出ている嘲笑であるとか蔑み、醜悪さや愚かさや浅薄さ…。年季が入っていて執拗で、どうしようもない程に蔓延っていてこびりついていて、そう容易には剥がし切れぬそれら。相対すれば決して無傷では済まされぬそれら。
笙野頼子は壊す。明らかにする。解き放ってくれる。強固である。そして何より面白い。めちゃめちゃに面白い。読む前と読んだ後では、まったく異なる。笙野頼子がいるから大丈夫だと思える。