心を奪われ、犠牲者として在り続けることを定められたものの、悲痛な叫び。その脆さこそが、自らを捕え、自らの残酷な欲望を誘発するのだと、身勝手に酔い痴れ、葛藤するものの心に映るが故に、瀕死の世界はひどく甘美に、蠱惑的に映る。絶望さえ、逃げ場のなささえ、抗えぬ無力ささえ、世界の凄艶さを高めるような。弱々しい叫びだけが、夢に覆われた現の虚しさを、抉り出すような。
殺戮、略奪、広がり行く退廃の凄惨な醜悪さ。世界を染める滅びの美しさ、厳しさをより一層知らしめる、人々を染める自棄の、惨たしい色彩。いびつに膨らむ焦燥。だが、冷気に閉ざされた世界の中、迸る言葉が歪みを溶かし、終わりだけが粛然と迫り来るそこに満ちるのは、重厚な愉悦。すべてを得、すべてに満ち、なにものにも代え難い、安堵に似た。
凍りつくほどに恐ろしく、美しい終焉、魅せられ、自らもまた世界とともに、覆い尽くされて行く。
……何だか物凄いものを読んだと言う印象。