華やかな世界の裏側に広がる、恐ろしくも蠱惑的な闇。歪んだ欲望が招き寄せる狂気。悦楽に満ちた悪夢へと、魂ごとその身を落として行く、恍惚。陰惨に鼓動し続ける闇を染める、血飛沫の鮮やかさ。退廃に息づく物語が醸し出す腐臭の、全身に絡みつくような、陰湿な艶を帯びた甘さ。清廉さを尊ぶ現実において、本来忌み、遠ざけられるべきものたちの、妖しく、したたかな輝きが、悲劇を待ち望む残酷な心を刺激し、淫靡なる幻夢への耽溺を誘う。
『妖恋』
人知れず咲いた恋の妖花。冷たく柔らかに滴る哀しみに照らされ、江戸の町々で、甘やかに香り、狂い咲く。花はみな、やがて、悲恋に落ちる。だが、絶望に浮かべるのは愉悦の貌、朽ち行く命の、最期の輝きは、凄絶なまでに美しい。恋の果てに散り行く者たちが残す情念。その惨さをこそ愛し、艶やかな幻想で抱く、夜の闇。妖美に彩られた、密やかな恋の花々、凄惨に、冷酷に、乱れ狂う、その艶容に、心奪われる。
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