あとがきの言葉が印象深い。この思いより生まれた作品であると、この言葉こそが作品の根幹にある思いであると、心よりそう感じられる。
だが、『少年十字軍』の子供たちは、悲しいだけの存在ではない。彼等は悲しくも強い。多くを知り、それ故に汚れ、狡猾に染まった大人たちの謀略にただ翻弄され続けるだけの、脆弱な存在のままでは終わらない。
彼等は強い。絶望に飲まれ、熱を失ったものの魂を、今一度蘇らせるほどに。無垢であることは、脆弱であると同時に強い。自らの熱情を殺すことなく、抱き続けられるが故に。熱情に従うことを諦めぬが故に、躊躇わぬが故に。矮小な私欲に、醜い欲望に削がれることのない、熱情の強さ。揺らぎ、無知であり続けることに、或いは、無知であり続けられないことに、戸惑いながら、それでも、熱情を選び取る強さ。大切なものを守りたいと願うもの、ただひたすらに奇跡を、幸福を、信じ続けるもの。集っては離れ、離れては集い、次第に膨らみ、重なり合い、反発し合い、共鳴し合い、強大な渦となる。
死を知り、生の味気なさを知り、無であったはずの心。満ち行くのは熱。子供たちに触れ、痛みを、怒りを、失ったすべてを取り戻したものの決意。抗うため戦い抜くと、夜へと変わり行く光芒に誓う、その決意の重さこそが、悲しみを包み、無に閉ざされた心にさえ火を灯す、子供たちの強さを照らし出す。
皆川 博子
ポプラ社 (2015-04-03)
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