奇妙な人たち、奇妙な出会い、奇妙な日々の中において平穏を守るため、Qが頑なに閉じ籠り続ける理念と言う鎧は、どこか身勝手で、独善的であるからこそ、厄介で、強固である作りのもの。自らの信じるもの、自らを守るもの、非常時において、自らの隠れ蓑となり得るもの。それに固執し、或いは、固執する自らを続ける限り、鎧として用いる限り、平穏は保たれる。凄まじい生の悪臭の中でさえのろのろと、噛み合わない言葉での、噛み合わない応酬を繰り返すQの愚かしさ。その割に絶望を回避するためには都合よく働く、思考の図太さ。醜くもおいそれと糾弾できぬ、嫌な馴染み深さがあるような。騒がしく、滑稽に描かれた様相に潜む、現実への皮肉。読後胸に広がるのは、苦く、黒い笑い。
講談社 (2014-07-11)
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