潜り続けるその先、深淵に横たわるはずの、死の薄さ。遠さ。暗く、不安定な内の、危うい深さまで沈み込んでいながら、重厚な響きを受け取るよう強く感じているそれは、死の気配ではなくむしろ、自らの属する生の多く。生に織り込まれた多く。
散らばり、雑然と広がるイメージ。だが、手繰り寄せてみれば、不確かなまま確かに、見出すことが出来る繋がり。不可解さをまとういくつもの結び目、繰り返し波及する違和感、淡い困惑の中にあってこそ際立つ、言葉そのものの美しさ。潤い、輝き、豊かに息づく言葉たちの。象られたものたちの印象を、自分自身がかつて、気ままに形作っていたそれを、すべて塗り替えてしまうほどの美しさ。
滑らかであるばかりではないその感触。いくつもの憂い、いくつもの苦しみを含む、色、音、流れ…重なり合い、巡る、生の暗さ、そして、僅かな明るさを感じ取る。茫漠と滲む戸惑いの中にこそ、咀嚼し難い、手強さの中にこそ。だからこそ、時に不快を捉えてなお、心惹かれる。
ヴァージニア ウルフ
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