読書と感想と記録: 『フィオナの海』、『かなしき女王ケルト幻想作品集』

2015年6月21日日曜日

『フィオナの海』、『かなしき女王ケルト幻想作品集』

フィオナ・マクラウド『かなしき女王ケルト幻想作品集』
内包する残酷な光さえ、濁りなく。何と美しく、清澄な世界だろう。色豊かに巡り、悠然と移ろう自然。命あるものの生き死に、感情の揺らぎ、愚かしく、勇ましく、慕わしい人々の相貌。その一つ一つ、一瞬一瞬より溢れ出でるものを見逃さず、掬い上げるよう、溢れ落ちて行くものの、儚い煌めきを忘れぬよう、たっぷりと、言葉を紡ぐ。御すること、殉ずること、信ずること。時に帯びる暗い輝きまで、殺すことなく捉えるため、敬虔に、清廉に、物語へと寄り添わせた言葉。満ちて行く色は淡く、荒々しく染まった息遣いさえ、柔らかに運ぶ。
松村みね子買い、そして尾崎翠を連想。

ロザリー・K・フライ『フィオナの海』
うとうとと眠りに溶け行く心を夢へと運ぶ、懐かしいおとぎ話のような、優しく、温かな物語。ひとりきりの覚束なさ。辿り着いた穏やかな時間。お腹を満たして行く美味しいごはん、甘いおやつ。動物たちとの交流。心踊る昔話。そして、ちっぽけなその身体を突き動かす、思いの強さ。幼い頃に抱いていた、遠く、届かぬものたちへの憧憬、共鳴、愛惜、憤り…蘇り、広がり行くその甘さに、今一度、身を委ねる。
矢川澄子買い。そう言った意味でも、懐かしく慕わしい邂逅を、綴られて行く言葉たちに見出す。