凄くいい。大庭みな子の「ヘンゼルとグレーテル」、「ラプンツェル」には、お話をなぞる、端正な言葉の中にも、物語に埋もれた残酷さや不穏を、淡く香り立たせるような、妖艶な柔らかさが。津島佑子の「めっけ鳥」には、淡々と連なる怜悧な語り口の中にも、抗い、守るため、戦い続けるものの、その強さに寄り添うような、語り手の、鋭い直向きさが。「青髭」は最早、その色彩、その豊艶さ、肥沃な退廃の中に物語を宿し、蠢く醜悪さを貪り、妖しげに潤わせたような、その美しさ、皆川博子のものと言うべき物語へと、昇華しているように思う。
高村 薫 阿川 佐和子 大庭 みな子 津島 佑子 松本 侑子
小学館 (2015-03-06)
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『女性のエッセイ・アンソロジー FOR LADIES BY LADIES』の感想いくつか。
大庭みな子「娘とわたしの時間」
自らを形作るものたち、或いは、自らの支えとして、今なお息づくものたちを語る。思い出の甘さ、温かさに囚われることのない言葉は、冷静なまま、端正なまま、それでもどこか、柔らかなものを含む。自らもまた伝え、育て上げ、満ちる力強さ。広く、怜悧な眼差しが光る。
鈴木いづみ「女優的エゴ」
妙に格好いい。良い、悪い、どちらでもなく、ただ格好いい。言葉はどこか、その足場の悪さ、その生き辛さを感じさせるよう。それでも届く言葉、崩れより届く言葉のしぶとさ。諦めずに生きて行くことの難しさを、残酷な熱に秘め、どうしようもないことを、気怠げに皮肉る。狡い。
平野レミ「ド・レミ前奏曲」
自らの生、そして、性に対するカラッとした明るさ。ハッキリと聞き取りやすい声色、賑やかで、馴染みやすい言葉を連ねる語り口、小気味好いお喋りの楽しさ。明け透けなのに、いやらしくも、下品でもなく、ただ、その時々を素敵に舞う心の痛快さを思わせる。これは面白い。こんなにも面白いエッセイを書く人であったのかと、驚きを伴う嬉しさを得る。
矢川澄子「卯歳の娘たち」
いくつもの矛盾、複雑さが入り混じったよう、それでも、言葉が象るそれは、愛情の響きと、その色を持つもの。押し潰すよう秘めた思いにさえ、より豊かなものへと深められる、愛惜の視線。過ぎた時間、懐かしく見遣り、それぞれを重ね、重ならぬものごと、愛おしむ。
富岡多恵子
「女の子の読書」整然としていることがかえって、含まれた辛辣さを際立たせているような気がする。「悪趣味礼讃」のごてごて具合が親しみ深くて自分は好き。
筑摩書房
売り上げランキング: 632,815
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大庭みな子「娘とわたしの時間」
自らを形作るものたち、或いは、自らの支えとして、今なお息づくものたちを語る。思い出の甘さ、温かさに囚われることのない言葉は、冷静なまま、端正なまま、それでもどこか、柔らかなものを含む。自らもまた伝え、育て上げ、満ちる力強さ。広く、怜悧な眼差しが光る。
鈴木いづみ「女優的エゴ」
妙に格好いい。良い、悪い、どちらでもなく、ただ格好いい。言葉はどこか、その足場の悪さ、その生き辛さを感じさせるよう。それでも届く言葉、崩れより届く言葉のしぶとさ。諦めずに生きて行くことの難しさを、残酷な熱に秘め、どうしようもないことを、気怠げに皮肉る。狡い。
平野レミ「ド・レミ前奏曲」
自らの生、そして、性に対するカラッとした明るさ。ハッキリと聞き取りやすい声色、賑やかで、馴染みやすい言葉を連ねる語り口、小気味好いお喋りの楽しさ。明け透けなのに、いやらしくも、下品でもなく、ただ、その時々を素敵に舞う心の痛快さを思わせる。これは面白い。こんなにも面白いエッセイを書く人であったのかと、驚きを伴う嬉しさを得る。
矢川澄子「卯歳の娘たち」
いくつもの矛盾、複雑さが入り混じったよう、それでも、言葉が象るそれは、愛情の響きと、その色を持つもの。押し潰すよう秘めた思いにさえ、より豊かなものへと深められる、愛惜の視線。過ぎた時間、懐かしく見遣り、それぞれを重ね、重ならぬものごと、愛おしむ。
富岡多恵子
「女の子の読書」整然としていることがかえって、含まれた辛辣さを際立たせているような気がする。「悪趣味礼讃」のごてごて具合が親しみ深くて自分は好き。
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