2015年6月17日水曜日

『グリムの森へ』、『女性のエッセイ・アンソロジー FOR LADIES BY LADIES』

『グリムの森へ』
凄くいい。大庭みな子の「ヘンゼルとグレーテル」、「ラプンツェル」には、お話をなぞる、端正な言葉の中にも、物語に埋もれた残酷さや不穏を、淡く香り立たせるような、妖艶な柔らかさが。津島佑子の「めっけ鳥」には、淡々と連なる怜悧な語り口の中にも、抗い、守るため、戦い続けるものの、その強さに寄り添うような、語り手の、鋭い直向きさが。「青髭」は最早、その色彩、その豊艶さ、肥沃な退廃の中に物語を宿し、蠢く醜悪さを貪り、妖しげに潤わせたような、その美しさ、皆川博子のものと言うべき物語へと、昇華しているように思う。


グリムの森へ (小学館文庫 た 29-1)
高村 薫 阿川 佐和子 大庭 みな子 津島 佑子 松本 侑子
小学館 (2015-03-06)
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