食べることは生きること。美味しいはそのまま、生きることをより豊かに、鮮やかに彩るもの。美味しいものには、そして、美味しいものを美味しいと喜び、味わい、率直に讃える姿には、見る者の心をときめかせる、華やかな魅力があるように思う。思い出と共に蘇る味の懐かしさ。料理上手な友という、身近で親しい師を持つ羨ましさ。愛する動物たちの妨害を叱りながら調理する光景の、楽しい賑やかさ。何という幸福感溢れるエッセイ。明朗な喜びに満ちた言葉のごちそう、読んでいるこちらまで楽しくなってしまう。鴨居羊子の語る食への思い、たくさん食べて、たくさん作って、たくさん喜んで、全力で食を楽しむその姿は、眩いきらめきとともに、たくましく鮮やかに駆け抜けた、彼女の人生そのものを思い起こさせる。
…どこかの文豪(文五)以上といい、鴨居羊子といい、自分はどうにも、嬉しそうにたいらげ、時にはマズイさえ楽しむような食いしん坊が、好きであるらしい。
鴨居 羊子
筑摩書房
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