そう言った物事を選び切り取る事で生まれたお話の、出口のない悶々具合。埒の明かないぐるぐる思案、脈絡を持たぬ広がり…寄り添いやすいが何だか妙に気恥ずかしい。ありがちな事にせよ拘りにせよ、多少なりとも心当たりがあると言うか、自分自身も似たようなものを持っているせいか、そんな切り取り方をされてしまうと、何だか妙に気恥ずかしい。
そして同時に面白い。気恥ずかしさと同時に感じる可笑しさもまた見逃せなかったりする。気恥ずかしさ同様、自分自身の心当たりによって可笑しいと感じるのか。含みたっぷり、物事の皮肉めいた引き伸ばし方であるとか、掘り下げ方であるとかが、或いは一打で決める際の力強さであるとかが、大変面白いものとして感じられる。よく知っているものの馴染みではない方の顔、平素は潜ませるべきとされる方の顔のアップ。その切り取り方象り方で現れた顔との思わぬ遭遇の面白さ…何と言うかこう、真顔で突然可笑しな事を言われた瞬間のそれに似た、思いがけない面白さがある。あれをこれをそう書くのかと、噴き出したり感心したり、心弾みっぱなし。
リディア デイヴィス
白水社
売り上げランキング: 101,239
白水社
売り上げランキング: 101,239