怖いのは、不可思議なものであるはずの物語を伝え継いで行く語り口の迷いのなさ。当然のように旅路を語り繋いで行く言葉の滞りのなさに、物語と自分の間にある隔たりの存在を思い知らされる。自分の中にはないもの達との遭遇と、不意にして稀な、自分の中にあるもの達との邂逅の繰り返し。計り知れぬ(自分と物語の)当然の距離…どこまでが通ずるのか、どこまでが異なるのか。
膨らむだけ膨らんで、それでいて姿形のそれよりも種(性質?)の相違による恐怖だけが漠然と残る、精霊、まぼろし、妖。当然の如く使われる魔法、いくつもの不可思議が当然の如く混在する世界。危機より脱する手段を物語る言葉の容易さと、言葉の容易さに反するその掴みがたさ。しかし何も自分の方に引き寄せて考える必要などないのだと気付く。未知に迷い込む事は怖く、それ故に愉しいのだから。