2015年11月30日月曜日

笙野頼子『居場所もなかった』

恐ろし過ぎる外。部屋捜し地獄、泥沼の不動産ワールド。外のこの崩し具合、歪ませ具合がまず好き。怒り、不安、疑い、困惑…自身に多くの苦しみを課すばかりである現実を、不快に、滑稽に、溶かし尽くすようおぞましく作り変えてしまうやり口が。痛快でさえある。
軽視、黙殺、理不尽かつ不当な仕打ちの数々。上手くいかなさ、そぐわなさ、居心地の悪さ。居場所のなさ。世界を生み出すほどに籠るもやもや。必要不可欠なオートロック。分厚い隔たりとして。外の流入を防ぎ、内の濃さを保つ為の。外とのズレにはもう、笑ってしまう。憤懣は当然、けれど笑ってしまう。
他人事に対する、理解出来ない事に対して発する笑いと言うよりは、(自分自身にも何となく心当たりがあるが故に)多少の共鳴を含む、気恥ずかしい笑い。籠りに籠ったり沈んだり彷徨ったりおちょくったりドロドロに崩したり、充満する苦しみも居場所のなさも、そのやり口も、自分にとってどこまでも好ましいもの。大体好きだが特に、この辺りの笙野頼子作品はサイコーである。



居場所もなかった (講談社文庫)
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