2015年12月13日日曜日

『母の発達』再読

何と邪悪で残忍で禍々しくて容赦が無くて毒々しくて痛快である事か。大変快い。ただ快いと言うだけのものではなく、少なくはない苦痛(身悶える類の)を伴うが故に、厄介であり、忘れ難いものとなる快さ。あまりにも強烈で身体に一時悪影響を及ぼす類の快さ。終えてみればスッキリしているのであるが。
母の解体、母の殲滅、母の再構築、母の誕生、増え続ける新種の母。何と陰湿で執拗で健気で律儀で不毛で切実な作業である事か。深く根付いてしまっているもの(腐りかけ、大変に鬱陶しいもの、人を不当に抑圧するもの、捩じ曲げるもの、だのに根付いてしまっている為に、腐りかけている事にさえ中々気づく事が出来ない、しかもそれはその抑圧の内にいる側の人間であっても)を壊して行く大変さ。作り変えて行く難解さ。そりゃあおぞましい光景にもなる。

兎に角もう無茶苦茶だ、しかしその容赦のなさが自分は好きだ。



母の発達 (河出文庫―文芸コレクション)
笙野 頼子
河出書房新社
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