2018年2月17日土曜日

日本の名随筆『人形』(別巻81)

小泉八雲、江戸川乱歩、佐多稲子、津島佑子、金井美恵子、種村季弘、澁澤龍彦を読む。密やかなもの。硬く、冷たく、脆く、儚く、妖しく、恐ろしく、甘やかで、静かで、透明で、繊細で、艶やかなもの。驚異であり、魅惑であるもの。黙して佇み、物憂げに、冷酷に、煌めき続けるもの。魅了し続けるもの。
けれどもやっぱり、金井美恵子が嬉しい。金井美恵子の2ページだけ違う。読むものの心当たりを刺激し、遠い記憶を引き出す、金井美恵子の2ページにこそ。どうしたって惹かれる。わたしのお人形…〈小さなキャラコのパンツをはかせてやったり、古くなった皮の手袋をこわして靴に縫い直してやったり、古道具屋で小さな玩具の瀬戸物のティー・セットを買ってきてあげたり〉する、わたしのお人形…。自分の内にもその記憶がある事を、その感覚がある事を、埋もれていた事を、確かに持っていたと言う事を、陶然と、思い出す。



日本の名随筆 (別巻81) 人形

作品社
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