2015年6月11日木曜日

久生十蘭『ノンシャラン道中記』

堪らない、諸々堪らない。何もかも、いちいち心憎い。光景を物語る言葉の豊潤さ。言葉より浮かび上がる情景、その色彩の鮮やかさ、その匂い立つ香りの濃艶さ。コン吉、タヌ嬢…人物の魅力、個性をより輝かせるような、彼等の姿形をそのまま象ったかのような、数々の呼び名のお洒落さ。軽妙で、洒脱な掛け合い、快い笑いを生む皮肉と言う毒、愉しさに満ち溢れたやり取りに相応しい、言葉遣いの絶妙さ。ノンシャランと行く、ノンシャランと喋る、気ままさ。何もかも堪らない。
美味なる言葉、舌先に広がるは蕩けるように甘やかな旨味、感じるは至福。瀟洒とはまさにこれ、夢心地においしさを、幸せを、たっぷりと堪能する。


うま(絵) しか(絵) ヤロウ
これはズルい。