充足と迷い入り混じる清貧の日々の中、巡り会えた道。そこは、向かうべき場所ではなく、帰るべき場所。憂い晴れたような力強さ。だが生に在る限り、苦しみはつきまとう。ただひたすらに進むものと、後を追うもの。両の口を、心を借り、醜さも、執着も、躊躇いも、温かな思いへの懐かしさも、すべて振り払い記憶に変える、圧倒的な力の存在を、書き記す。
自らより多くのものを削ぎ落とし、捨てて行く厳しさ。自らの深淵より目を背けない、直向きさ。言葉にさえ無駄はなく、研ぎ澄まされたような鋭さ、清廉さがある。進み続ける姿の、切実さに心惹かれながら、届かぬその道の、深さを思う。