語り手も、家族も、人々はみな当然のように、平然と、弱くて狡くて、繊細で厚かましい。世界は当たり前のように、開かれておらず、また開かれる事もなく、ひどく手狭なもの。どの色合いも帯びず、淡々と、最後まで平易さを失わない言葉が時に憎い。こちらは全然見過ごす事が出来ないと言うのに。危うさを、不穏さを、綻びを、確かに捉えながら、それでも、何一つ壊してしまう事なく、いつまでも平易なものであり続ける言葉が。心地よくて、不気味で、わかりやすくて、わかりやす過ぎて、時に憎い。
読んでいるこちらも弱々なので、いちいちひりついたり、ひっかかったり、戸惑ったり、目を背けたくなってしまったり、不安になったり、簡単に安心してしまったりして、揺さぶられてしまう。今村夏子の文章。今村夏子はこの先、どういったものを書くのだろうか。
今村 夏子
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