読書と感想と記録
個人的な読書の感想と記録。金井美恵子のファン。
2015年6月25日木曜日
アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』
陰惨に閉ざされた世界の内より、まとう不安ごと捉えた、美しさ、快さ。不穏に在り、哀しみに満たされたものの放つそれら…退廃に属し、惨たらしく現れるイメージの数々…傍観者のまま寄り添う形での耽溺は後ろ暗く、抱いてしまうことにさえ、躊躇いを覚えさせるほどに、なにもかもが不安定で、危うい。
何という、暗く、苦しい生なのだろう。刻み込まれた傷は魂にまで到達し、犯し尽くすよう、未だ自らを蝕み続けている。歪められたままのすべてで、生に在ることの難しさ…脆さはない。不調和な落ち着きと、冷静さがある。自らの在りようを、世界に対する自らのあり方を、既に決心してしまったものの、深い諦めにも似た。
肌を刺す冷気のように、硬く澄んだ言葉。拒絶の鋭さと、抗いの痛切さを以て、その絶望を、孤独を、恐怖を、鮮烈に響かせる。
アサイラム・ピース
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