流れ続ける時間の、残酷さの及ばない場所に、その旅はあった。いつまでも続くような愛おしさ。だが、区切りを持つ日々へと、終わりある日々へと、戻って行く時が来ることを知っているからこそ、旅の永さがかえって、悲しいものに感じられる。止めようのない流れの内で記した言葉の、静かな色合い。それは当然で、避けようとすることさえ、試みられぬもの。夢の時の愉しさはそのままに、読後にはじんわりと、寂しさが滲む。
武田 百合子
中央公論新社
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