2016年6月16日木曜日

津村節子『みだれ籠 旅の手帖』

かつて読んだ津村節子の小説のいくつもが、まるで自分自身の記憶であるかのように浮かび上がって来る。懐かしいと感じる。自分自身の貧しさや惨めさ、心許なさであったかのように。自分自身の若さや無謀さであったかのように。浮かび上がって来る。
強い人だといつも思う。頑なで、生真面目で、堅固な人であると。なにかこう、役目を果たそうとするものの、まっとうしようとするものの直向きさがあるように思う。流される事なく踏みとどまり、着実に歩みを重ね続けるものの手堅さがあるように思う。寄り添う事。光を当てる事。掬い上げる事。いつも徹底し、成し遂げる強い人であると。

ハワイ紀行が一番よかった。仕事抜きの旅。時折見える茶目っ気や、気を緩めた際の羽目の外し方でさえ、どこか生真面目である辺りなど。



みだれ篭―旅の手帖 (文春文庫)
津村 節子
文藝春秋
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