尽きることなく湧き出でる不安。際限なく溢れ、底知れぬ海と化すように。生というもののわからなさ、果てしなさ。一人きりという居所のなさ。内へ、外へ、茫洋と掴み所なく、それでいて、見過ごせぬ強さを示しながら、息づき続けるなにか…未だ把握し得ぬ自ら、未だわかり得ぬ自らを持て余す、遣る瀬無さ。偽りのない静けさを持つものへの羨望。偽りをまとい溺れるもの、自らを飾るそれらさえ、薄く塗り潰した顔に、引き出された嫌悪。滾り、内に巡る怒りは、身体を蝕む病のように、重く、不快に蠢く。
その身を持ち、流れる時の遅さ、自らのわからなさを、掴み難い形を確かめるよう、重ね続ける思い、不明瞭さを不明瞭なまま運ぶ、心の明瞭さ。わからないものを明かし、わからなさに近づき、決して素通りしない言葉の、寄り添いやすさが好ましい。
冥く、不穏に揺らめく若さ、行き場を求め、滞る怒りの行方、消えることのない孤独の深さに触れる。
高橋 たか子
講談社
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