2018年4月25日水曜日

『須賀敦子が歩いた道』

頑ななまでに、向き合い続けた人。自らと。自らの孤独と、悲しみと。違和感と。頑ななまでに、探り続けた人。その人が。その場所が。その作品が。その言葉が。自らの内で、どのように息づいているか。関係性。結び付き。繋がり。位置。種類。正体。何故惹かれたのか。何故こだわるのか。何故受け入れる事が出来なかったのか。それらは自らに、何をもたらしたのか。自らはそれらを、どう消化したのか。あくまでも、自らを以って対峙する。自ら歩み、自ら動き、求め続ける。自ら体現し、自ら寄り添い、探り続ける。実行し続ける。頑ななまでに。その切実さ。自らの生に対する姿勢の、その清廉さ。改めて思い出す。
自分もまた、距離を知るために読んでいるのだといつも思う。何故惹かれるのか。探るために。全面的に好きと言う訳ではないのに、手に負えないと、うまく馴染むことが出来ないと、時にはその言葉をひどく近寄り難く、飲み込み難いものであると感じる事さえあるのに、何故こうもこだわってしまうのか。掴むために。

松山巖の「須賀さんとの会話」が面白かった。滲み出る近しさ。〈こういうと、いつも通り、ほんとーぉ、といって笑うかな。〉〈早業だなあ。テレますか。〉〈須賀さん、ペッピーノさんと恋愛中か新婚当時に見たのでしょう。それなら、萎れた葉っぱなんか見えなかったのでは。〉〈私にとってイタリア旅行は特別な日々だったけれど、あなたともう一度あたりまえに話をできる、きっかけをつくってくれたのです。〉〈嬉しかった。旅のあいだ、ほかにもずいぶんと話をしましたね。〉…まさしく会話であったように思う。一人だけでするものではない、そこには確かに、須賀敦子とのやりとりがあったように思う。


とんぼの本 須賀敦子が歩いた道
アレッサンドロ・ジェレヴィーニ 須賀 敦子 芸術新潮編集部 松山 巖
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