記憶と言うにはあまりにも自在であり、鮮やかな情景。抜け出したのだと思う。記憶と言う言葉の囲いを。それ自体が。持ち主の生真面目な咀嚼と反芻の果てに。そして生き始めたのだと思う。不自由な時の流れを離れ。
須賀敦子の本は割と読んでいる方だけれど、自分はそのエッセイを、並べたり繋げたりする事が出来ない。何かこう、それぞれが違う時の流れの中にあるような気がして。また一つずつ取り出す事が出来ない。そのどれもが終わりを持たず、区切りを持たず、未だ続いているような気がして。現実の時間を離れ。自由に。自由であるが故にしばしば意外な重なり合い方をし。意外な広がり方を見せ。意外な残り方をする。
須賀 敦子
白水社
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