2016年6月17日金曜日

獅子文六『ちんちん電車』

そのよさ。その利便性。愛惜の念。思い出。大いに語る。これが大変面白い。何故こんなにも面白いのか。一々面白い。アッケラカンと挟まれる不意の一撃に参る。思わず吹き出す。あまりにも鮮やかなバッサリ振り。皮肉、批判の意図を含むもの(時に嘆き)である事は間違いない。けれど不快にも不愉快にもならぬのは、言葉も気持ちも湿気を帯びる事なく常にカラッとしているせいか。愛おしいものは愛おしい。イマイチなものはイマイチ。ただそれだけであって、そこに押し付けがましさがないせいか。その語り口がどこまでも軽妙であるせいか。大変好ましく、素直に笑う。
振り返る思い出のほとんどが旨いものと旨いもの屋の事である辺りもまた獅子文六。



ちんちん電車 (河出文庫)
ちんちん電車 (河出文庫)
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獅子 文六
河出書房新社
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