途中不安になった。あまりにも静かで。もがいてもいない、抗ってもいない。あまりにも無気力で。あまりにも茫漠としていて。明確な言葉をもって見限られるよりも怖い。そのまますべて手放してしまうのではないか、と思った。あまりにも動きが鈍くて。
けれどようやく、見えるようになって来たのだと。自ずと。意識的に挑んだ結果そうなった、と言うよりも。晒され続ける内、折り合いをつけ続ける内、自然と。徐々に。思わぬ風に。掴めるようになって来たのだと。戻って来てくれてよかった、と不意に浮かぶ。
笙野 頼子
朝日新聞社
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