2017年1月26日木曜日

イタロ・カルヴィーノ『魔法の庭』

どれだけ可笑しくても。どれだけ陽気であっても。どれだけ滑稽であっても。紙一重の不穏さがあると言うか。兎に角不安で仕方がない。一歩踏み込めばもう、見えて来るのは悲惨さや残酷さの方である気がして。でこぼこと賑やかな彼等も、彼等がいる世界も。容易く、一瞬にして姿を変えてしまうような気がして。悲惨であったり、残酷であったりする方の姿に。
魔法がとけてしまう、その間際にずっとあると言うか。見え方が変わってしまう事を、自分は終始恐れていた気がする。見え方が変わってしまう事の悲しさを、自分が多分、知っているために。楽しくても。夢中であっても。全然落ち着かない。妙な居心地の悪さ。

可笑しかったり奇妙であったりする世界が見知った世界に戻ってしまう事への不安と言うか。少しめくればすぐ見えてしまうのではないかと。その危うさ故に愛おしくはあるのだけれども。



魔法の庭 (ちくま文庫)
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イタロ カルヴィーノ
筑摩書房
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