手応えがある。触れたのだと言う。決して脆くはない。繊細ではあるのだけれど。硬く、崩れ落ちぬ強さがあるように思う。夢のような美しさを。あり得ぬようなそこが、確かに存在していた事を。克明に伝える言葉。
意外な近しさを感じる事もしばしば。物事も、美しさも、自分自身も、平易に、ぼかす所なく語っていて、凄く好ましい。身近さを感じても、その世界が深遠であると言う印象は薄れる事がない。知っても知っても幻滅する事がないと言う稀有な喜び。
多田智満子の本をもっと読みたいと思う。この人の内にあるものをもっと見てみたいと思う。そしてそれをどう語るのか、もっと知りたいと思う。はかりしれないのに、明晰であり、受け入れやすく、快く、美しい。これぞ享楽的読書。