読書と感想と記録
個人的な読書の感想と記録。金井美恵子のファン。
2017年1月9日月曜日
『須賀敦子のフランス』
須賀敦子のフランス…冷たくて、心細くて、硬く強張っていた時間の事ばかり、覚えていた。噛み合わず、落ち着かず、見つける事が出来ずにいた、あの。始まりとも言うべき時間の事ばかり。もどかしく、不安であった頃の、あの。暗さや悲しみの事ばかり。自分は覚えていたのだけれど。
それだけではなかったのだ、と気付く。遠いわだかまりを、この人は自分自身の手でほどく事が出来たのだ、と。納得する。柔らかにほぐれて行く。懸命に探り、突き詰め、向き合い続け、最後には、辿り着く事が出来たのだ、と。確信する。その証となるいくつもの温かな痕跡に触れ。
現実のそこを見ても。自分には多分見出せない。少しでも近付きたくて読むのだけれど。自分が行きたいと願う場所が、どこにもない事を実感するだけ。
須賀敦子のフランス
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