2017年1月4日水曜日

KAWADE夢ムックの『総特集 森茉莉』を読んで、森茉莉雑感

知れば知る程掴めなくなる。くくれなくなってしまう。森茉莉。手に負えない程膨らんで、彼方此方に飛翔して、どこまで魅力的なのだろうと思う。きっとどこまでも魅力的なのだろうと思う。恍惚の相貌と暗さ。そのどちらもが本当である厄介さ。そのどちらもが本物であると言う都合の悪さ。底は見えないし、境目も見当たらない。大変な人だ。知れば知る程語るのが怖くなる。どんどん卑屈になってしまう。自分の内にも自分だけの森茉莉はいるけれど、それが正解でない事は自分が一番よくわかっている、と言った風。際限なく出て来てしまって、掴みきれないし、全然言い尽くせない。

笙野頼子と早川茉莉の対談が面白い。近い所。違う所。あるあると差異を楽しむ。この人達の森茉莉であれば、差異も楽しめる。差異を受け入れる事が出来る。いつの間にか相手の森茉莉を自分の森茉莉に取り入れている事さえある。森茉莉=無尽蔵の人、狡いと思うほど聡くて、凄い人。自分がそうハッキリと思うようになったのも笙野頼子の『幽界森娘異聞』を読んでからであるし。こうやってますます広がって行く。
森茉莉は多分自分のような人間を嫌いであると。わかる。自分もそう思う。自分は森茉莉が好む種類の人間ではないと。凄くわかる。そもそも片思いが丁度いい。好き勝手に夢を見ていたい。その言葉を読み、陶酔し、自分だけの森茉莉を夢想し続ける事こそ至福。森茉莉を愛し、森茉莉に愛された人達の語る森茉莉を読み、その大変さを実感し続ける事こそ至福。



森茉莉―総特集 (KAWADE夢ムック)

河出書房新社
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