2017年2月10日金曜日

皆川博子『花闇』

惑う程に濃い。酔う程に濃い。瘴気と見紛う程に。その壮絶な生の色香。今なお、重く滞る。甘やかに充満し続ける。爛熟の美。凄惨な闇の中でこそ極まる。妖しく、危うい。頽廃の美。見る者を魅了し、蝕む。艶やかに匂い立つ様も。高慢に咲き誇る様も。熟れ、絢爛に輝く様も。腐り、爛れ、残酷に崩れ行く様も。未だ鮮明にある。
凄艶。溺れる。酔い痴れる。揺れる事も、動じる事もない、影の目を通して見届けるが故に。終わりまで、覚める事なく。欲も、熱も持たぬ、虚な影の心に薫る唯一の、愛憎故に。深まる。離れ難い美に抱くその愛憎の、深遠さ故に。高まる。のぼり詰める。物語は凄艶に。



花闇 (河出文庫)
花闇 (河出文庫)
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皆川 博子
河出書房新社
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