2017年2月19日日曜日

金井美恵子『本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ』

思えば、金井美恵子を読んで、以後だ。自分が読む事の快さを求めて本を選ぶようになったのは。金井美恵子を読んで。自分は知ってしまったのだ。読む事の喜びを。緻密に、執拗なまでに緻密に、間隙なく編み込まれたが故に、手強く、決して破れる事のない、強靭な連なりと化した言葉に触れる事の喜びを。引き出されたのだ。自分は。金井美恵子の小説に。読む事への欲求を。ただ快いばかりであるだけではないために、より逃れ難く、途方もなく厄介である喜びを以って。欲求を、際限なく。
自分が何故金井美恵子に惹かれるのか。わかった気がする。金井美恵子の小説が何故快いのか。わかった気がする。知っているのだ。金井美恵子は。読む事の喜びを。そして、難しく、際限なく、時に不毛でさえある、書くと言う行為の甘美さを。よく。知っている人間なのだ。金井美恵子は。
今回も笑う。否応なしに吹き出す。強靭な当て擦りの数々。最高であった。



本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ
金井 美恵子
日本文芸社
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