2019年10月3日木曜日

多和田葉子『ヒナギクのお茶の場合』再読の記録

よく見知っているはずのもの達が、見知らぬ見慣れぬ姿であったりして、見知らぬ見慣れぬ用いられ方をされていたりして、素通り出来ぬ面白さ。自分がそれを、全然知ってなどいなかった事に、大半を見過ごしていた事に、気が付き思い知る面白さ。こんなにも危うい。こんなにも可笑しい。こんなにも沢山ある。見過ごせない事ばかり、こんなにもある。こんなにも解ける。こんなにも足せる。こんなにも掴めない。こんなにも掴める。こんなにも拾える。軽くたじろいでしまう面白さ。そわそわと、落ち着かず、不安なのだけれども、確かに楽しく、快い面白さ。

多和田葉子を読む事の面白さを言葉にする難しさ…。不毛で細かくていちいち気になって気になる事ばかりで見過ごさなくて容易ではなくて引っかかりが多くて定まらなくて不安で不安定で振り返る暇がなくて戻れなくて落ち着かなくてそわそわしてしまって、いつもすぐさま連れて行かれてしまう。
ずっと探し続けているようで、彷徨し続けているようで、試み続けているようで、取り留めがなくて、キリがなくて、全然見つからなくて、掴めなくて、決めてしまえなくて、それこそ山のようにあって、次から次へとあって、切れ目がなくて、終わらなくて、面白い。ざわつく。目からウロコが落ちたりする。何にでもなるわたし。形を変え、形を失い、形のないものにさえなる。どこへでも行くし、どこまでも行くし、どこへも行けない。



ヒナギクのお茶の場合
ヒナギクのお茶の場合
posted with amazlet at 19.10.03
多和田 葉子
新潮社
売り上げランキング: 404,998