自らの幸福や快楽、自らの内にあり、埋もれてなおいつか甦り、引き出され続け、残り続ける、美しい瞬間や情景、楽しさや親密さや甘美な感覚と言ったもの達を語る金井美恵子の言葉を読むと言う、至福のひと時…。そこには、かつて金井美恵子の小説の中で、或いはエッセイの中で、自分が確かに目の当たりにし、感じた事のあるもの達の姿も。その言葉を読む事で、読んだ事で、確かに感じ、生きた事で、自らの記憶となり、自らにとっても幸福や快楽と化したもの達の。
とても楽しくて、細やかで、色豊かで、雑多で、沢山詰まっていて、わくわくする。魅惑であり過ぎて、くらくらする。その親密さや熱さへの羨望。親密である事の重要さよ。物語るものと親密であるからこそ、その言葉は強靭でしなやかで、気持ちがいい。