その孤独の痕跡。その静けさの、無であった事の痕跡。如何に今、自らの周りに、見るべきものがないか。語り合うべき相手がいないか。ここではないと言う。ここは生き辛いと、ずっとそうであったと言う。その苦痛の痕跡。あまりにも、強く、重い。或いは、その喜びの痕跡。その熱情と、充足と。祈りの痕跡。内へ、内へ、幾度となく降りて行き、そこに溜まるすべてを見尽くそうと、自らの奥底に広がる暗がりと、向き合い続けていた事の。確かな痕跡。自らの内部にある、その濃さが。自らの国で、自らと同じ深さに在る人たちと言葉を交わし、互いに理解し合う交流の中で生じた、その濃さが。自らがいなくなってしまった後も、残り続けるように、繰り返し、繰り返し、書き留めていた事の。痛切な、痕跡。
酷く悲しい。酷く息苦しい。誰もいない。こんなにも濃いものを残して、こんなにも濃い、悲しみや苦しみや痛みや、孤独を残して、いなくなってしまった。いないのに、濃い。いないのに、強く、厚く、重い。いつまでも残り続ける濃さ。どこまでも降りて行って、存在全体で、生きて、知り尽くそうとした、その果て。