2018年1月24日水曜日

今日泊亜蘭『海王星市から来た男/縹渺譚』

面白かった、スーパー面白かった。素晴らしい自在さ。「綺幻燈玻璃繪噺」と言う魔法…。術中にはまる甘美さ。魅惑の幻術、鮮やかに欺かれる喜び。ちっとも不審に思わなかった。ただどこまでものぼり詰めて行ける事が楽しかった。「縹渺譚」、「深森譚」と言う迷宮…。そのスケールの壮大さ、途方もなさ。彷徨い、巡り会い、幾度となく見失い、多くを超え、多くを生き、多くを逃し。どこまで行くのか。どこまでも広がり行くのか。繋がりの妙。盛り上がりの妙。大迫力のクレッシェンド!
膨らみ、膨らみ、妖しさを帯び、深遠さを増し、いよいよ謎めき、どんどん深まり、高まって行き、爆ぜるまで。すべてが明らかになる時。ガラガラと崩れる。何もかもが力を失う。落ちて行く、ひっくり返る、逆転する。足場が、世界が、物語が。登りつめた先で、残酷にも突如ひっくり返ってしまう。ガツンと打たれ、景色がまるで変わってしまう。見え方がまるで変わってしまう。その快感たるや。その驚き、その物凄さ、その高揚感たるや!
魅力的な人物達、パリッと歯切れがよくて、荒っぽくて、厚ぼったくなくて、湿っぽい所もなくて、読んでいて小気味よい話し言葉。ことごとく心憎いオチの数々、不穏で妖しい(それ故に堪らなく蠱惑的な)笑みを、或いは皮肉を、静寂を、哀感を、苦味を、恐怖を、或いはそのすべてを残して行く、豊かであり、複雑であり、感嘆し、唸るほかのないそれ等。兎に角最高であるそれ等。
フラリと諸々超え超え、壮大な旅をして来た気分。毎回とんでもない所に繋がっていて、自分は宇宙をも垣間見た。極上の体験。



海王星市から来た男/縹渺譚 (創元SF文庫)
今日泊 亜蘭
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