2018年3月2日金曜日

ライナー・チムニク『タイコたたきの夢』

「ゆこう どこかにあるはずだ
もっとよいくに よいくらし!」
はじまりは一人の声、一つのタイコ。けれどもどんどんどんどん、増えて行く。どんどんどんどん、広まって行く。なってしまった人はもう、戻らない。戻れない。戻りようがない。熱病のようなもの。それまで潜伏していたものが、顕現するようなもの。勿論伝染しない人もいる。自分はどっちかな。どちらかと言うと、とどまりたい側だけれど。なってしまわないかな。
タイコたたきは大変都合が悪い。誰にも止める事が出来ないし。じゃまものは容赦なくやっつけるし。頑なだし、まっすぐだし。タイコたたきは大変厄介で、大変滑稽だ。彼等はどんどんどんどん、進み続ける。進めば進むほど、夢からは遠ざかって行くのだけれど。それでもまだまだ、進んで行く。数が減っても、全然上手くいかなくても、やりようがなくなってしまってもまだ、完全には消えない。彼等には恐らく、完全に消え失せてしまうという事がない。また現れる。きっと何度でも繰り返す。ただ笑い飛ばす事なんて出来ない。
画がとにかくいい。とても好き。わらわらわらわら、可愛らしくて、小粒で、よく動いて、表情もいっぱいあって、生き死にの様子も存外に細かくて、多彩で、大変よかった。



タイコたたきの夢
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