2018年2月27日火曜日

今日泊亜蘭『最終戦争/空族館』

容易く滅びる。容易く破壊される。容易く乗っ取られる。容易く撃退する。スピード侵略、スピード解決。すぐに大宇宙。すぐに光速。すぐに終末。地続きで異次元。みんな垢抜けないまま、素朴なまま、星を超える。懲りないまま、愚かなまま、大規模大宇宙と言う厄介さ。おっかなくてスーパー楽しい。
‬ 短い話ばかりだけれど、いずれも素晴らしく、何よりオチが秀逸過ぎる…!今日泊亜蘭…偏屈で、気難しくて、照れ屋で、とんだひねくれ者であるように思う。稀代のエンターテイナーであるように思う。一筋縄ではいかないものばかり。もっと騙されたいし、驚きたいし、皮肉で痺れたい。
人の愚かしさや矮小さ、滑稽さ小狡さであるとかを、これ以上ないくらい有効に使う。こちらが息を飲むほかないぐらい、鮮やかに見せつけて来る。強力な切り札のように、最後に突き付けて来る。皮肉り、揶揄し、糾弾するよりももっと巧みに、抉るように、抉り取るように、魅せるように、オチに利用する。そのやり口の妙、いちいち痺れる。

〈「…お前らの世界なんぞ、おれ達の大きさから見れば、おれ達が遊びのためにブチ壊して覗く、蟻塚のなかの蟻の世界みたいなものさ」〉
〈が、そう言ってΣ星人が嘲ったとたん、その人工惑星じしんがグラグラと激しくゆれだしたと思うと、高い大ドームの屋根がいきなりポッカリと割れ〉…
上には上が、更にそのまた上が。もっと広大なものが、壮大なものが。より膨大なものが。とてつもなく強大なものが。自分達の世界はまったくすべてではない。すべてだと思っていたけれど、全然すべてなどではなかった。小さな箱であった。もっと大きな人達にとってのシルバニアファミリー的なそれであった。何度も思い知る。何度も立ち竦む。何度も急降下。けれどいつしか、立ち竦み、落下し、思い知るその瞬間を、自分は待ち望むようになっていた。大ハマり。



最終戦争/空族館 (ちくま文庫)
今日泊 亜蘭
筑摩書房
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