2018年9月25日火曜日

金井美恵子『小説論 読まれなくなった小説のために』

本当にもう、これよりほかないと言う感じ。やはり自分には金井美恵子だけでよいのではないかとさえ思う。金井美恵子の言葉があればよい、金井美恵子しか読みたくない気持ちにまで到達する。本当にもう、これ以上はない。自分にとって読むと言う事は、金井美恵子の言葉がすべてであると言っていい。金井美恵子を語る事は、読む事を語る事だ。自分にとっての読書を、本と言うものが、自分にとって如何なるものであるかを語る事だ。いかに手強くて、喜ばしいものであるかを語る事だ。読む喜びを語る事だ。唯一無二の至福を語る事だ。快楽を語る事だ。
金井美恵子しか読みたくない時間が、自分には確かにある。金井美恵子だけでよいと確信する瞬間が、自分にはしばしばある。それは恐ろしいぐらいに幸福な事だ。金井美恵子を読むために、自分は読み続けるのであるし、聞き続けるのであるし、見続けるのであるし、生き続ける。金井美恵子を読むと言う至福のために。多くの物語を、小説を、光景を、感覚を、言葉を、自分は吸収し続ける。
自分は幾度となく金井美恵子を読み、金井美恵子を読む事の、その喜びと快楽と幸福について語って来たけれども、結局は金井美恵子の言葉を以って金井美恵子を語る以上の方法など、自分にはないのではないかと思う。

…インタビューも至福過ぎて、諸々読み返したい気持ちにもなったし、やがて至福と化し、幾度となく読み返すべきものとなる、自分がまだ読んでいない金井美恵子の小説を更に求むる気持ちにもなったため、『ピクニック、その他の短篇』をたまらず注文する。


小説論 読まれなくなった小説のために (朝日文庫 か 30-3)
金井 美恵子
朝日新聞出版
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