あとは「風の記憶」が特にいい。幸田文の言葉を解する事が出来る喜びを思う。その言葉の選び方の絶妙さ、自然さ。身に付いた言葉であると感じる。それまでの生の中で。心と身体と言葉が綺麗に、弛む事なく繋がっているかのよう。またそうして選ばれる言葉がそのままで美しい事の凄さよ。読めば快く馴染み、ストンとおさまる。
言葉の選び方も、物の見方も好きだ。よく見る人であるように思う。何が出て来るか、何が見えるか、しっかりと確かめる人であるように思う。そしてよく考える人であるように思う。人や物事をはかり、断定する事の難しさを知っている人であるように思う。