2017年1月29日日曜日

『精選女性随筆集 第一巻 幸田文』

ほぼ既読。けれど「「なやんでいます」の答え」が大変よかった為、満足。自分の間違いを知る。まだあった。自分は幸田文を、狭く見積もり過ぎていたようだ。幸田文、まだまだあった。自分は十分、その凄さを知り、その敵わなさを知っていると思っていたのだが。まったく十分ではなかった。数えればもう三年あまりも、ほんとうには平和でなかった筈ですとは。何と鮮やかな。ガツンと来た。恐れ入った。
あとは「風の記憶」が特にいい。幸田文の言葉を解する事が出来る喜びを思う。その言葉の選び方の絶妙さ、自然さ。身に付いた言葉であると感じる。それまでの生の中で。心と身体と言葉が綺麗に、弛む事なく繋がっているかのよう。またそうして選ばれる言葉がそのままで美しい事の凄さよ。読めば快く馴染み、ストンとおさまる。

言葉の選び方も、物の見方も好きだ。よく見る人であるように思う。何が出て来るか、何が見えるか、しっかりと確かめる人であるように思う。そしてよく考える人であるように思う。人や物事をはかり、断定する事の難しさを知っている人であるように思う。




精選女性随筆集 第一巻 幸田文
幸田 文
文藝春秋
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