2018年11月21日水曜日

山尾悠子『増補 夢の遠近法 』2018年の記録

世界を読むと言う感覚。言葉で出来ている、言葉のみで完成している、世界そのものを。その理ごと、その法則ごと、その不文律ごと。世界を読むと言う愉悦。その終焉までをも含む。その変貌し行く不穏さをも、その冷たく無慈悲な静謐に生じる煌めきの、希少さをも含む。世界のそのすべてを知り尽くし、網羅し、内包し、形作るかのような言葉の気高さよ、尊さよ、美しさよ、素晴らしさよ…。
イメージの奔流であり、滞留であり、渦であり、層であり、沈澱していて、行き渡っていて、響き渡っていて、満ち満ちていて、世界そのものであるもの。完結している、世界そのものであるもの。粛然と、冷酷に、白々と、緩やかに、激しく、矢継ぎ早に、間隙なく、織り込むように、重ねて行くように、世界を物語り、再現する言葉。読む事で溢れ出す。読む事で膨らみ出す。蠢き出す。その凄まじさよ。溺れてしまいそうになる。壊れてしまいそうになる。あまりにも鮮やかで。あまりにも膨大で。あまりにも美しくて。あまりにも残酷で。あまりにも精巧で。

語り切ると言う事。現して見せると言う事。構築すると言う事。完結させると言う事。世界そのものを。その速度。その高まり。その膨らみ。その研ぎ澄まされて行く様。その織り込まれて行く様。その連なり。その配し方。その終わり。何という素晴らしさ。あまりにも素晴らしい。珠玉であるとしか言いようがない。山尾悠子は素晴らしくて、高く尊い。自分の本棚にこのような素晴らしき魅惑たちが棲まうと言う喜び。


増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)
山尾 悠子
筑摩書房
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