慕わしい闇。濃密な澱み。近しく、甘やかな死。誘われ、誘われるままに落ち、どこまでも落ち、自ら望み、とどまる愉悦。みな、自ら求める。自ら望む。現よりも、よほど愛おしいと。幻想へ、闇へ、深みへと、みな、自ら落ちて行く。
幻想の極致…。麗しく、恐ろしく、深い。黒々と、深い。どこまでも沈んで行ける。落ちて行く心地よさ。極めて死に近い深みにて、滞り、溜まる闇の慕わしさ。朽ちて行く事。身を委ねる快さ。あまりにも官能的であり、蠱惑的な…。
望み、求める者の元に、それらは現れる。囚われたいと欲する者の元へ。生を疎み、現実を倦み、死こそ慕わしいと感じる者の元にて。甘やかな幻想は広がり、その生を、現実を、やがて侵食する。何と幸福な…。
表題作は特に素晴らしい…。到達するまでの、至るまでの。確かに、これは極致であると感じる。