もつれ、絡まるもの、解いても、解いても、解ききれぬような、向き合っても、向き合っても、その絡まりのほどを、把握しきれぬような、取り組めば、取り組むほど、広がり、緻密になっていくような、不毛さ、もどかしさ、果てしなさ。本当は真っ直ぐなものであるかどうかさえ、そもそもどういった形をしているものであるかさえ、解り得ない、だが、漫然と絡まりに見えるものを、黙々と解いているかのよう。不思議なもので、のめり込めば、のめり込むほど、絡まりは複雑なものへと変わり、更に広がって行く。むず痒い。これは深刻なむず痒さ。
アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』
不確かで、鮮やかで、緩やかで、とろとろと、微睡みに浮かぶ、夢想のよう。淡く、柔らかな視界に、出会い、捉えたものの、生々しい息遣い。旅は明瞭に、だが、不可思議に流れ、ままならぬことへのもどかしささえ、それもまた当然のことと、安堵へ変わる。ぼんやりと、溶けて行く境目。穏やかに旅を包む時間、辿り着くことよりもむしろ、巡ることの方を望みとし、巡り続けるものの、巡らされ続けるものの、言葉を読む愉しさ。遠ざかり、不意に蘇る情景の愛おしさ。儚さを滲ませ、優しく、妖しげに佇む夜の中、快く、誘われるままに漂う。
アントニオ タブッキ
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